そのままの君が好き〜その恋の行方〜
唯が隣に居てくれるキャンパスライフは、充実していた。


学年も違い、学部も違う俺達は、当然授業の始まりや終わりの時間も違うはずなのに、一緒に登校し、一緒に大学を後にした。


サークルも当たり前のように、俺と同じところを選んだ唯とは、この時期、大袈裟でなく、ずっと一緒にいた印象がある。


「そんなにいつも一緒に居て、飽きないのかよ。」


サークル仲間達からの冷やかし半分、呆れ半分の言葉も心地良かった。


夏休みに初めて2人で行った長野への旅行も懐かしい思い出だ。唯にせがまれて、眠い目をこすりながら早起きして見に行った雲海。その眺めに圧倒され、手を繋ぎながら、じっと2人で眺めていた。


幸せだった。この幸せがずっと、唯との時間がずっと続いて行くことに、何の疑問も持ってなかった。


夏休みが過ぎると、俺達3年生は就職活動が本格化してくる。慣れないスーツ姿で、企業セミナーを回ることは、もう春から始まっていたが、先輩達の就活が終わりが見えて来るこの時期からが本当の勝負の始まりだ。


特に俺は、漠然とどこかでサラリーマンと思ってるだけで、恥ずかしながら、この時期になっても、具体的な希望職種が決まっていなかったから、取り敢えず、時間の許す限り、セミナーには足を運んだ。


授業もゼミが入り、手を抜けなくなり、唯と過ごす時間は徐々に減って行ったが、それが俺達の仲に特に影を落とすことはなかった。


クリスマス、初詣、バレンタイン、ホワイトデー、誕生日・・・要所要所のイベントは必ず一緒に過ごしたし、会えなくても、電話やLINEを欠かす俺達ではなかったから。


季節が巡って大学に入ってから4度目の春。就活も終盤戦、俺は営業職に絞って面接に臨んでいた。そして、ここでも高校野球での実績は、俺を助けてくれた。


甲子園出場、優勝経験という経歴はやはり、目を引くようで、特に面接官の食い付きがよかったのが、何を隠そう今の会社。それだけで採ってもらったわけではない・・・と思いたいが、とにかく決め手の1つには恐らくなって、俺は希望職種の内定を得ることが出来た。


「良かったね、ソウくん。」


内定の連絡を受け、俺がすぐに唯に報告の連絡を入れると、彼女は祝福してくれた。


「じゃ、お祝いしないとね。いつにしようか?」


そんな唯の言葉を、俺は嬉しく聞いていた。
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