そのままの君が好き〜その恋の行方〜
次の日、学校が終わってから、俺達は食事に出掛けた。唯が案内してくれたレストランは、とても学生の分際で、入れるような雰囲気ではなく、俺は尻込みしたけど


「大丈夫、私に任せて。」


と勝手知ったるといった様子で入って行く唯のあとを、俺は恐る恐る付いて行った。


「まず乾杯しよ、このワインをお願いします。」


俺が就活を頑張ってる間に、唯はめでたく20歳の誕生日を迎え、俺達は晴れてアルコールで乾杯出来るようになっていた。


運ばれて来たワイングラスを重ねた俺達は、それから次々と目の前に現れる、見たこともないような料理を目を白黒させながら、口に運ぶ。と言っても動揺してるのは、俺だけだったけど。


「なぁ、本当に大丈夫なの?」


「大丈夫だよ。お父さんにたまに連れてきてもらって、ここのシェフさん、よく知ってるんだ。」


尚も、キョドっている俺を安心させるように、笑顔で唯は言う。


なるほど、お嬢様はやはり違うと内心舌を巻きながら、俺は美味としか言いようのない、食事を堪能させてもらった。


久しぶりに会えて、いろいろな会話を楽しんだ後、帰りの会計も、唯がクレジットカードで、当たり前のように支払い終え、少々たじろいだ気分になっていた俺に


「行こ。」


と笑顔を向けると、俺の腕をとって歩き出した。


近くにある海の見える公園を、本当に久しぶりに俺達は、寄り添って歩いた。どのくらい歩いたのだろう。周りに人影がなくなって来たところで、唯は立ち止まった。


「ソウくん。」


「うん?」


絡めていた腕を解いて、呼びかけて来た唯を見た俺は息を呑んだ。唯が目に涙を一杯にためて、こちらを見ていたからだ。


「ソウくん・・・ごめんなさい。」


「唯・・・。」


「私、もうソウくんと一緒には、いられません。本当にごめんなさい!」


そう言って、俺に深々と頭を下げる唯。そのあまりに信じ難い言葉を聞いた俺は、まるで時が止まってしまったかのように呆然と立ち尽くした。
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