そのままの君が好き〜その恋の行方〜
1年後輩になる新人達が、集合研修を終えて、各部署に配属されてくるのと、入れ替わるように、私は、横浜にあるハローワークへの転勤の辞令が出た。


これは、第一線機関の業務習得の為に、キャリア全員が半年間配属されるもので、本来なら1年生の時に、体験するはずのものだったが、新しい人事システム構築の為との触れ込みで、私達の代は一部が2年生になってからということになり、私はその後発部隊に回されたのだ。


そして、敬愛する先輩の近藤さんにも、辞令が出て、私達は完全にバラバラになることになった。


現任最後の勤務が終わり、自分のデスクを片付け終わった私は、私より在籍が長く、まだ片付けに時間が掛かっている近藤さんに挨拶に行った。


「約1年でしたが、本当にお世話になりました。」


「こちらこそ、あまりいい先輩じゃなかったと思うけど、桜井さんと一緒にやれて、楽しかった。」


「近藤さんが居て下さらなかったら、私もうここにはいなかったかもしれません。」


「いや、俺が面倒見過ぎちゃったのかもしれない。かえって、君の成長の芽を摘んでいたような気がする。なんか、可愛い妹のような気がして、つい・・・な。」


苦笑いの近藤さんに対して、妻帯者に恋しても、どうにもならないんだけど、やっぱり妹止まりか・・・と複雑な心境の私。


「桜井さんにとっても、俺と離れて、新天地に行くということは、いい機会だと思う。現場研修は、自分が厚労省の役人になった原点を見つめ直すことにもなる。もう、一緒に仕事は出来ないだろうけど、半年後、君が成長して、本省に戻って来るのを、楽しみにしてるよ。」


「ありがとうございます。近藤さんも、お身体に気をつけて、頑張って下さい。」


こうして、私達は新天地に向かって行った。
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