そのままの君が好き〜その恋の行方〜
「あの日、桜井さんと会ったあとの沖田さんは、明らかに、いつもと違ってました。なんかずっと物思いにふけってる感じで、車の中で、私が話しかけても、ほとんどうわの空で・・・。」


「そうなんだ。」


「沖田さん、私の同期の何人かが、アタックしても、全然振り向かなくて・・・気になってる人もいない。俺は、今は仕事が恋人だからって・・・でも、なにか違う気がするんです。」


それはたぶん、沖田くんが唯さんのことを未だに引き摺ってるから。それくらい、彼は唯さんのことを慕ってたんだ。その思いの深さは、私も身をもって、思い知らされてるから・・・。


でも、それは私の口から言うことじゃない。私は違うことを口にした。


「三嶋さんも?」


「えっ?」


「三嶋さんも、沖田くんのことが気になってるのかな?」


「違います。私、彼氏いますから。」


慌てて首を横に振る三嶋さん。


「でも・・・やっぱり気になってるのかな?沖田さん、普段は本当に優しくて、明るくて。でも、あの日の沖田さんは違ってて、それを私だけが見ちゃったから・・・。そう言う意味で、気になってます。」


そう言ってまっすぐに三嶋さんは、私を見る。


「わかった。じゃ、今度沖田くんに伝えるよ。三嶋さんが心配してたって。」


「えっ?」


「実はね、たぶん近々、沖田くんに会うことになると思うから。」


「そうなんですか?」


「うん。今度、私の高校からの親友の結婚式があって。旦那さんは沖田くんの野球部の1年先輩だから、当然沖田くんも出席するはずだからね。」


その私の言葉に、三嶋さんはパッと表情を輝かせた。


「なら、私のことなんか、どうでもいいですから、是非、沖田さんとゆっくり話してあげて下さい。私、絶対、沖田さんは桜井さんのこと、気になってると思います。」


既に私が、沖田くんにハッキリ振られてることを知らない三嶋さんのその言葉に、私は複雑な心境だった。
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