そのままの君が好き〜その恋の行方〜
振り向けば、そこには微笑む唯の姿が。
今日の日を楽しみにしていた。尊敬する先輩と高校3年間クラスメイトだった水木さんの結婚は、我が事のように嬉しかったし、野球部で苦楽を共にした、仲間達や、先輩後輩達との再会は、心踊るようだった。
でも、その日は間違いなく、あの子との再会の日にもなる。そのことが、俺の心を重くしたのも、また確かなことだった。
あれから2年、情けない話だが、俺はまだあの辛い別れを振っ切れてはいなかった。正直に言えば、唯の顔を見たくなかった。新しい彼氏に愛しそうに駆け寄る彼女の姿に、胸が潰れる思いだった。
ましてや、こんな2人だけの時間など、とても耐えられない。逃げ出したいくらいなのに、そうも出来ず、俺はただ硬い表情のまま、唯を見ていた。
「お久しぶり、です。」
「ああ・・・久しぶり。」
ペコリと頭を下げる唯から、思わず視線を逸らす俺。自分の弱さ、小ささが嫌になるが、どうにもならない。
「やっぱり、そうだよね。」
「えっ?」
「もう私に笑顔なんて、向けてくれるわけないよね。」
「・・・。」
「私にそんな資格なんかあるわけない。わかってたんだけど、期待しちゃってた。バカだよね、私。」
寂しそうに笑う唯。
「もう2度とソウくんの前には姿を現さない。そう決意して、アメリカに渡った。でも、今回ソウくんに会えるのが、楽しみだった。・・・だけど、さっき、挨拶に行った時、あなたは目も合わせてくれなかった。私がしたことが、あなたをどれだけ傷つけたか、私は今更ながら、思い知らされた。でも、やっぱりあなたに会いたかった。」
「・・・。」
「これ。」
と言って、唯が胸元から出して来たものを見た俺は、息を呑んだ。
「今でも、大切に身に着けさせてもらってる。」
付き合ってから、初めてのクリスマス。俺は唯に自分とお揃いの指輪を贈った。唯は喜んでくれたが、当時まだ高校生だった彼女は指に、はめるわけにもいかず、それをペンダントにして、肌身離さず着けてくれていた。あの、別れの日も・・・。
「捨ててくれよ。」
「えっ?」
「渡した時、言ったと思うけど、そんなのガラス玉に毛の生えたようなものだ。なんの価値もないし、まして、これからの君の人生に必要な物とは思えない。」
「ソウくん・・・。」
「僕は・・・とっくに捨てた。あんなもの、もう見たくもないから。」
その言葉に、唯は一瞬、俯いたが、すぐに俺を見て言った。
「ソウくん。私、本当は、今でもあなたのことが・・・。」
「よせ!」
俺はとっさに叫んでいた。
「そんなこと言っちゃダメだ。そんなこと言って、何になる。彼氏に申し訳ないと思わないのか。」
「・・・。」
「それに、そんなこと聞かされて、平然としていられるほど、強くはないよ、僕は。」
そう言い残すと、俺は唯を残して、歩き出した。そして思った。
(あの指輪、本当に捨てなきゃな・・・。)
俺も、実は、今もあの指輪は捨てられなかったんだ。
そして・・・この会話の一部始終を桜井さんに聞かれていたことに、俺は全く気づいていなかった。
今日の日を楽しみにしていた。尊敬する先輩と高校3年間クラスメイトだった水木さんの結婚は、我が事のように嬉しかったし、野球部で苦楽を共にした、仲間達や、先輩後輩達との再会は、心踊るようだった。
でも、その日は間違いなく、あの子との再会の日にもなる。そのことが、俺の心を重くしたのも、また確かなことだった。
あれから2年、情けない話だが、俺はまだあの辛い別れを振っ切れてはいなかった。正直に言えば、唯の顔を見たくなかった。新しい彼氏に愛しそうに駆け寄る彼女の姿に、胸が潰れる思いだった。
ましてや、こんな2人だけの時間など、とても耐えられない。逃げ出したいくらいなのに、そうも出来ず、俺はただ硬い表情のまま、唯を見ていた。
「お久しぶり、です。」
「ああ・・・久しぶり。」
ペコリと頭を下げる唯から、思わず視線を逸らす俺。自分の弱さ、小ささが嫌になるが、どうにもならない。
「やっぱり、そうだよね。」
「えっ?」
「もう私に笑顔なんて、向けてくれるわけないよね。」
「・・・。」
「私にそんな資格なんかあるわけない。わかってたんだけど、期待しちゃってた。バカだよね、私。」
寂しそうに笑う唯。
「もう2度とソウくんの前には姿を現さない。そう決意して、アメリカに渡った。でも、今回ソウくんに会えるのが、楽しみだった。・・・だけど、さっき、挨拶に行った時、あなたは目も合わせてくれなかった。私がしたことが、あなたをどれだけ傷つけたか、私は今更ながら、思い知らされた。でも、やっぱりあなたに会いたかった。」
「・・・。」
「これ。」
と言って、唯が胸元から出して来たものを見た俺は、息を呑んだ。
「今でも、大切に身に着けさせてもらってる。」
付き合ってから、初めてのクリスマス。俺は唯に自分とお揃いの指輪を贈った。唯は喜んでくれたが、当時まだ高校生だった彼女は指に、はめるわけにもいかず、それをペンダントにして、肌身離さず着けてくれていた。あの、別れの日も・・・。
「捨ててくれよ。」
「えっ?」
「渡した時、言ったと思うけど、そんなのガラス玉に毛の生えたようなものだ。なんの価値もないし、まして、これからの君の人生に必要な物とは思えない。」
「ソウくん・・・。」
「僕は・・・とっくに捨てた。あんなもの、もう見たくもないから。」
その言葉に、唯は一瞬、俯いたが、すぐに俺を見て言った。
「ソウくん。私、本当は、今でもあなたのことが・・・。」
「よせ!」
俺はとっさに叫んでいた。
「そんなこと言っちゃダメだ。そんなこと言って、何になる。彼氏に申し訳ないと思わないのか。」
「・・・。」
「それに、そんなこと聞かされて、平然としていられるほど、強くはないよ、僕は。」
そう言い残すと、俺は唯を残して、歩き出した。そして思った。
(あの指輪、本当に捨てなきゃな・・・。)
俺も、実は、今もあの指輪は捨てられなかったんだ。
そして・・・この会話の一部始終を桜井さんに聞かれていたことに、俺は全く気づいていなかった。