そのままの君が好き〜その恋の行方〜
俺の前にO店を担当していただけあって、金沢さんは状況をよくつかんでいた。ミ-ティング終了後、慌てて電話した俺に、O店の担当者は、売場変更をK社のラウンダ-と相談するつもりだったことをあっさり認め、俺は汗をかかされた。


とりあえず、明日朝一で伺いますからと、なんとかなだめるように言って、電話を切った俺は、三嶋を呼んだ。明日のスケジュールを変更せざるを得なくなり、彼女との調整が必要になったからだ。


その話が済んで、俺が部屋を出ようとすると


「沖田さん。」


と三嶋が俺を呼び止める。


「うん?」


「沖田さん、なにかあったんですか?」


「なんだよ、いきなり。」


「ずっと気になってるんですけど・・・最近の沖田さん、ちょっと変です。」


「えっ、そうか?」


「この間、お友達の結婚式に出てから・・・変です。」


そう言って、三嶋はじっと俺を見る。


「三嶋・・・。」


心当たりのある俺が、ちょっと言葉に困っていると


「桜井さんと、何かあったんですか?」


「桜井さん?」


だが、三嶋の口から出て来た名前に、俺は意表をつかれた。


(そうか・・・こいつは俺と桜井さんの間に、なにかあると思ってるんだった。)


三嶋の勘違いに気付いた俺は、平静を取り戻した。


「桜井さんとはいろいろ話をしたよ。披露宴の受付も一緒にしたし、テ-ブルも近かったからな。懐かしい話に花が咲いたよ。」


「それだけ・・・ですか?」


「ああ。」


釈然としない表情を浮かべる三嶋。でも俺はウソはついてない。


「そうか、俺そんなに変だったか?」


「はい。いつもの沖田さんだったらO店の件なんか、真っ先に手を打ってると思います。」


「確かにな。疲れてるのかな?まだ12月に入ったばかりだって言うのにな。三嶋に心配かけてるようじゃ、俺もまだまだだな。スマン。」


意識して明るいテンションで俺は言う。


「じゃ、お詫びの印に、呑みに行くか?」


「ダメです。私には・・・。」


「愛しの彼氏がいるんだもんな。ハイハイわかりました。じゃ、明日に備えて早く帰って寝ることにします。じゃ、明日頼んだぞ。」


「はい、お疲れ様でした。」


俺がいつもの調子に戻ったのを見て、三嶋はホッとしたように笑顔を浮かべていた。
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