そのままの君が好き〜その恋の行方〜
まさか三嶋さんが、途中で出てくるとは思わなかったけど、とりあえず、用件はちゃんと伝わった、よね・・・。


本省に戻り、以前の医政局総務課に復帰した私は、また書類とデータ作成に追われる日々を過ごすことになった。


やり甲斐という意味では、ハローワークの方が正直あったけど、生意気な言い方になってしまうが、私が厚労省を目指したのは、あの場所で働く為ではなかった。


ハローワークに行くことは、厚労省を目指した原点をもう1度思い起こす、いい機会になるはず。異動前に近藤さんに言われた言葉が、改めて思い出された。


部屋には、近藤さんの姿はなく、後輩がもう、当たり前のように業務についている。私も負けてはいられない。


師走だが、予算編成も終わり、国会も月初で終了。この時期はちょっと一息感があるのが、民間とは少し違うかもしれない。


そんな感じで過ごしていた12月の半ば、仕事が終わって、帰宅の途についた私の携帯が鳴った。待ち受けに表示された名前を見た私は、すぐに電話に出た。


「もしもし、悠。」


『ごめんね。今、大丈夫?』


「うん、今退庁したところ。どうしたの?」


『加奈、お正月の三が日なんだけどさ。どこか空いてない?』


「うん。親と初詣行くくらいしか、用事ないから。」


我ながら情けない返事。


『じゃぁさ、2日にみんなで初詣に行かない?』


「でも家族とは?」


『うん、それは元日に行くんだけどさ。ほら、この間は、いろいろお世話になったのに、ちゃんとお礼もしてないし、みんなとも久しぶりにゆっくりと話したいから。塚原くんは3日には仙台に帰るみたいだし、ウチのパパも3日から仕事だから。』


うわぁ、「ウチのパパ」だって・・・。


『だから、2日なら由夏も含めて、みんな大丈夫なんだ。あとは加奈と沖田くん。どう?』


「私は大丈夫だよ。」


『よかった。じゃあとは沖田くんだけだね。』


「うん。」


『ということで、加奈よろしくね。』


「えっ?」


『加奈から沖田くんに連絡してあげて。』


えっ、ちょっと待って。悠、私と沖田くんのこと、知らないわけじゃないよね?なのに、なんで・・・。


『連絡ついたら教えてね。じゃね。』


「ちょっと、悠!」


慌てる私にお構いなく、悠は電話を切った。
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