そのままの君が好き〜その恋の行方〜
そして、2人で電車に乗り込むと


「おぅ。」


なんと偶然にも由夏と塚原くんが。まずは、新年の挨拶を交わし合った私達は、そのまま賑やかに目的地に向かう。


「何、待ち合わせたの?」


「うん。」


「やるじゃん。」


「えっ?」


「それでこそ、今日を企画した甲斐があるってものだよ。」


そう言って、笑う由夏。


そっか、やっぱりそういう含みがあったんだね。ありがとう、みんな。


そして、浅草の駅に着くと、改札口には悠と先輩が待っている。


「悠!」


「由夏、加奈。」


手を振って、迎えてくれた悠と再会を喜び合う。


「ねぇ、大丈夫?」


こうやって会えるのは嬉しいけど、これから人混みに向かうから、悠の身体が心配になる。


「大丈夫。だいぶ安定して来たし、なんと言っても2人目だから。」


「舞ちゃんは?」


「ウチの親が預かってくれてる。今日は久しぶりにゆっくり話そうよ。」


「そうだね。」


男子組も、挨拶が一段落したようだ。私達は浅草寺に向かって歩き出した。


この前、来た時も、春休みで、観光客で賑わっていたけど、今日は、その比じゃない。


とにかく雷門がいつ見えてくるのかと思うくらいに、行列が続いている。結構、風が冷たく、また悠のことが心配になるけど


「大丈夫だって。カイロいっぱい貼ってるし。」


と笑顔。さすがに母はぬかりはないようだ。待たされた時間は長かったけど、久しぶりだから、会話が弾んで退屈はしない。ホントにこういう時って、高校生に戻るよね。


そして、いよいよお参り。今年こそ素敵な恋を、そうお願いするようになって、もう何年になるだろう。今年も懲りずにまた、そうお願いしよう。でも今年は、仕事も、もっともっと頑張る。欲張った1年にしたい!


お参りを終えて、横を見ると、沖田くんが、まだ手を合わせていた。


(何をそんなに一所懸命に、祈ってるの?)


私は心の中で、そう彼に、問い掛けていた。
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