そのままの君が好き〜その恋の行方〜
そして、歩き出した私達。そう言えば、前回はまだ花より団子だった悠が、お参りが終わった途端、売店に突進して、付き合い始めて間もなかった頃の先輩を苦笑いさせていた。その悠が、ミセスになったどころか、まもなく2児の母だ。


「あの頃の悠を、お腹の赤ちゃんに見せたいよね。」


服の上からもわかるくらいふっくらして来た悠のお腹を見ながら、私と由夏は笑い合う。


「いや、今も基本的には変わらんぜ。悪阻も治まって来て、お腹の赤ちゃんと2人分と称して、よう食ってる。」


「ちょっと、パパ!」


そんな私達の会話が耳に入った先輩の暴露に、悠は旦那さんを甘く睨む。


「それでお腹周りは、ともかく、あとはあんまり変わらないって、すごいよね。」


「そうでもないぞ。やっぱり・・・。」


「もうパパの意地悪。みんなの前でそんなこと言うことないでしょ。もう知らない!」


「ゴメンゴメン、悪かったよ。ママ。」


拗ねる悠を慌てて、なだめる先輩。やっぱり子供が一緒じゃなくても、もうお互いの呼び方は「パパ-ママ」なんだね。ちょっとビックリだな。


「おっ、見えて来たぞ。」


そんなところへ塚原くんの声。次の目的地が見えて来たらしい。


「えっ、ホント?久しぶりだな。」


その声に、ご機嫌斜めだった悠の顔が途端にほころぶ。私達が向かった先は、これまた前回もお昼を食べる為に立ち寄った天ぷら屋さん。悠が何処かから仕入れて来た情報を元に、入ったんだけど、高校生だった私達には味もランチ価格も絶品だった。


今回お昼はまたあそこで、というのは当然悠のリクエスト。


「妊娠中なのに、よくそんな脂っこいもの食べたいと思うよね。」


「雀、百まで踊り忘れずって言うけど、本当だね。」


その私の言葉に、みんな笑うけど、悠はもうご馳走を前に、全く気にしてない。


お店は混んでたけど、ちゃんと由夏が予約を入れてくれていて、私達はすんなり、席に案内される。


「そう言えば、あの時のツカと岩武は険悪だったよな。」


「ええ。俺達、気を遣ったんだからな。」


「ウソつけ。由夏に聞こえるようにいろいろ言って、ますます俺達を険悪にしたのはどこの誰だ。」


「あれはお前達の為を思ってのことだって、何度も言っただろ。」


そう言って笑う沖田くん。なかなか素直になれないでいる由夏と塚原くんを何とかしたいと、みんなで応援したのも、今ではいい思い出だ。
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