そのままの君が好き〜その恋の行方〜
「それで塚原くんはなんて言ってるの?やっぱり由夏に来て欲しいのかな。」


「聡志は何にも言わないよ。聡志の立場なら当然だよ、いい加減なこと言えないよ。まだ自分がプロ野球選手として、どうなるのか全く目途も立ってないのに。今、私が仙台に行くってことは、結婚して私の人生も背負うってことだもん。そんな簡単なことじゃないはずだよ。絶対に。」


そうだよね。今は男が女を必ず養わなきゃならない時代じゃないけど、結婚ってまだ、そういう面が、全くなくなったわけじゃない。まして安定という面では、もっとも遠い職業だもんね、プロ野球選手って。


「でも、たぶん聡志は、内心では私に来て欲しいって思ってると思う。そうじゃなきゃ、困る気もするし。それに聡志がプロ野球選手として完全に成功したのを見届けてから、結婚するんじゃ、ちょっとずるい気もする。」


「由夏・・・。」


「どうしたら、いいんだろうな。どうしたいんだろうな、私。困ってるよ、正直。でもね・・・。」


ここで由夏は私の顔を見た。


「1つだけはっきりしてること。それは聡志と別れるって選択肢、それだけは私の中には全くないから。」


そう言うと由夏は、ようやく笑顔を見せた。


スカイツリ-を降りたところで、由夏と塚原くんとはサヨナラした。塚原くんは明日、仙台に戻って、新たな戦いをスタ-トさせる。今日は、これからしばしの別れを惜しんでおいで、由夏。


そして、私と沖田くんは、2人きりになった。
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