そのままの君が好き〜その恋の行方〜
保育園に着いたのは7時ギリギリ。やって来た私に、しかし保育園側は登録の親族以外の方には、お引渡し出来ないと、困惑顔。
「事情は、お父さんからお聞きになってますよね?」
「絵里ちゃんのお父様からは、確かにご連絡を頂きました。失礼ですが、あなたと近藤さんとのご関係は・・・?」
「仕事の同僚です。」
「申し訳ありませんが、それではやはりお引渡しは・・・。」
「じゃ、お父さんが迎えに来るまで、こちらで預かって頂けるんですか?」
その私の言葉に、保育士は黙る。代わって、園長らしき人が
「しかし、何か事故があった時に、私どもとしても、責任が取れません。」
「責任なら、私が取ります。」
そう言い切った私に、ますます困惑の色を濃くする保育園側。
「あっ、加奈ちゃん、どうしたの?」
そこへ騒ぎを聞きつけたのか、玄関に顔を出した絵里ちゃんが、私の顔を見て、パッと顔を輝かせて、駆け寄って来た。
「絵里ちゃん、このお姉さん、知ってるの?」
「うん。この間、パパと映画見に行った帰りに、会ったんだ。パパのお仕事のお友達だよ。ね、加奈ちゃん。」
4歳の子に「加奈ちゃん」と呼ばれて、正直恥ずかしかったけど、この絵里ちゃんの言葉が決め手になって、私はようやく信用された。
ただし、今回だけの特別処置です。このようなことがまたあるようでしたら、もう絵里ちゃんをお預かり出来ませんと、お父様にお伝え下さいと、強く釘を刺されて、私達はようやく、保育園を後にした。
家までの道は、絵里ちゃんが、ちゃんと案内してくれた。預かって来た鍵で中に入ると、はっきり言って、かなり乱雑な状況。日々の暮しに追われている様子が、痛いほど伝わってくる。
近藤さんには、冷凍食品を食べさせてやってくれと頼まれたので、用意する。休みの日はともかく、普段はこんなものばかりだ、子供の食育に悪いのは、わかってるんだけどね、と近藤さんは自嘲気味に話していた。
よかったら、君も食べてくれとは言われてたけど、さすがに遠慮して、お腹ペコペコで、嬉しそうに食べている絵里ちゃんを眺めていた。複雑な気持ちになった。
結局、近藤さんが帰って来たのは、9時半を過ぎていた。
「パパ、お帰り〜。」
「ただいま。絵里、いい子にしてたか?」
「うん、加奈ちゃんが迎えに来てくれたんだよ。」
だいぶ眠そうにしてたけど、パパの顔を見ないとやはり不安だったのだろう。駆け寄って来た絵里ちゃんを抱き上げると、近藤さんは私を見た。
「桜井さん、本当に助かった。ありがとう。」
「いえ。じゃ、近藤さん、私これで失礼します。」
「すまない。このお礼はまた改めてさせてもらうから。」
「いえ。私が勝手に出しゃばったことですから、気になさらないで下さい。」
「加奈ちゃん、バイバイ。」
パパに抱かれたまま、手を振ってくれた絵里ちゃんに笑顔で、手を振り返すと、私は部屋を出た。
(由夏、これはしょうがないよ。)
先日の由夏の忠告を忘れてはいない。しかし、今日は仕方がない。私は急ぎ足で、駅に向かった。
「事情は、お父さんからお聞きになってますよね?」
「絵里ちゃんのお父様からは、確かにご連絡を頂きました。失礼ですが、あなたと近藤さんとのご関係は・・・?」
「仕事の同僚です。」
「申し訳ありませんが、それではやはりお引渡しは・・・。」
「じゃ、お父さんが迎えに来るまで、こちらで預かって頂けるんですか?」
その私の言葉に、保育士は黙る。代わって、園長らしき人が
「しかし、何か事故があった時に、私どもとしても、責任が取れません。」
「責任なら、私が取ります。」
そう言い切った私に、ますます困惑の色を濃くする保育園側。
「あっ、加奈ちゃん、どうしたの?」
そこへ騒ぎを聞きつけたのか、玄関に顔を出した絵里ちゃんが、私の顔を見て、パッと顔を輝かせて、駆け寄って来た。
「絵里ちゃん、このお姉さん、知ってるの?」
「うん。この間、パパと映画見に行った帰りに、会ったんだ。パパのお仕事のお友達だよ。ね、加奈ちゃん。」
4歳の子に「加奈ちゃん」と呼ばれて、正直恥ずかしかったけど、この絵里ちゃんの言葉が決め手になって、私はようやく信用された。
ただし、今回だけの特別処置です。このようなことがまたあるようでしたら、もう絵里ちゃんをお預かり出来ませんと、お父様にお伝え下さいと、強く釘を刺されて、私達はようやく、保育園を後にした。
家までの道は、絵里ちゃんが、ちゃんと案内してくれた。預かって来た鍵で中に入ると、はっきり言って、かなり乱雑な状況。日々の暮しに追われている様子が、痛いほど伝わってくる。
近藤さんには、冷凍食品を食べさせてやってくれと頼まれたので、用意する。休みの日はともかく、普段はこんなものばかりだ、子供の食育に悪いのは、わかってるんだけどね、と近藤さんは自嘲気味に話していた。
よかったら、君も食べてくれとは言われてたけど、さすがに遠慮して、お腹ペコペコで、嬉しそうに食べている絵里ちゃんを眺めていた。複雑な気持ちになった。
結局、近藤さんが帰って来たのは、9時半を過ぎていた。
「パパ、お帰り〜。」
「ただいま。絵里、いい子にしてたか?」
「うん、加奈ちゃんが迎えに来てくれたんだよ。」
だいぶ眠そうにしてたけど、パパの顔を見ないとやはり不安だったのだろう。駆け寄って来た絵里ちゃんを抱き上げると、近藤さんは私を見た。
「桜井さん、本当に助かった。ありがとう。」
「いえ。じゃ、近藤さん、私これで失礼します。」
「すまない。このお礼はまた改めてさせてもらうから。」
「いえ。私が勝手に出しゃばったことですから、気になさらないで下さい。」
「加奈ちゃん、バイバイ。」
パパに抱かれたまま、手を振ってくれた絵里ちゃんに笑顔で、手を振り返すと、私は部屋を出た。
(由夏、これはしょうがないよ。)
先日の由夏の忠告を忘れてはいない。しかし、今日は仕方がない。私は急ぎ足で、駅に向かった。