そのままの君が好き〜その恋の行方〜
そして、私の生活は日常に戻った。近藤さんは実家のお母さんが、しばらく滞在出来ることになったそうで、私の出番は、本当に終わったようだ。


気が付けば、国会は予算も成立し、私が関わった法案の審議に入っている。もうすぐ4月、年度変わりを迎える季節。出勤途中の桜並木も満開だ。


官僚の世界の、年度末は慌ただしい。国会が終わる6月には上は事務次官から、下は私達のような一般職員までが対象となる人事が一斉に発令される。


あのバタバタとみんなが浮足立つ一種異様な雰囲気が、また今年も、やってくる。今は、その前の腰を落ち着けて、仕事をこなす最後の時期だ。


そんな日々を過ごしている週末、私と沖田くんは、三度目の正直、ようやく初デートの日を迎えることが出来た。


横浜の予定だったデートは延期を繰り返してる間に、だいぶ気候がよくなったので、春のドライブに変更。目的地は、千葉。春の房総半島は、もう花がいっぱい咲いているはず。楽しみだ。


「おはよう、沖田くん。」


「おはよう。今日はよろしく。」


「こちらこそ。」


わざわざ、私の家まで迎えに来てくれた沖田くん。ありがとうね。


実を言えば、男子と2人きりのドライブなんて初めて。恥ずかしながら、昨日はあんまり眠れなかった。でも沖田くんの優しい笑顔で、私の緊張も徐々にほぐれて行く。


首都高からアクアラインに入り、海底トンネルを抜けると、海が見えて来る。


「きれい。」


「天気が最高だよね。」


もう初夏かと思うくらいの明るい日差し。本当にいい天気に恵まれた。海ほたるが見えて来たけど、帰りに寄ることにして、私達は先を急ぐ。


いよいよ、海が360°に広がって来る。風がある日は、ちょっと怖いけど、今日は穏やか。私がそんな風景を、しばし見つめていると


「桜井さん、悪いけど、ちょっとテレビかけてくれないかな。」


と沖田くんの声。


「なに見るの?」


「甲子園、確か今、神奈川代表が試合してるはずだから。」


「そうか、OK。」


そうだよね、今は選抜大会真っ盛りだもんね。
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