そのままの君が好き〜その恋の行方〜
遠くに浮かぶ風の塔を見ながら、私達は歩く。


「今日は楽しかったです。ありがとうございました。」


そう言って、頭を下げる私を、沖田くんは少し、照れ臭そうに、見ていたけど


「こちらこそ。」


と言うと、少し間を置いて、また口を開いた。


「桜井さん・・・ゴメン。」


えっ?こんないい雰囲気なのに、私また振られちゃうのって、焦ったけど、沖田くんは私を優しく見る。


「あの時、せっかく僕に告白してくれたのに、僕は、失恋の痛手から立ち直れず、ノーの返事をした。だけど、実はあの直後から、君の存在が僕の中で徐々に大きくなっていたことに、僕はつい最近まで自分で気づいてなかった。」


沖田くん・・・。


「でも、正直に言う。僕は今だに、その失恋を引き摺ってる。自分でも情けない、未練がましい、そう思う。だけど、悔しいけど、まだダメなんだ。」


「知ってる。」


「えっ?」


「ごめんなさい。私、悠の結婚式の時の沖田くんと唯さんの会話、聞いちゃったんだ・・・。」


「桜井さん・・・。」


驚く沖田くん。


「あなたのあの時の辛そうな様子、見てられなかった。実はあの日、私もう1度、沖田くんにチャレンジしようと思ってた。だけど・・・出来なくなっちゃった。」


その私の言葉に、沖田くんは少し俯いたけど、すぐにまた私を見た。


「僕のそんなあやふやな気持ちを知ってたのに、君は今日、僕に会ってくれたのか。」


その問いに肯いた私は、逆に聞いた。


「ねぇ、沖田くん。今日1日私と一緒にいて、率直にどう思った?私って、やっぱり沖田くんと身の丈合わないかな?」


そう言って、私は沖田くんをまっすぐに見た。


「それは・・・まだわからない。」


その沖田くんの返事は、正直、私を落胆させた。


「こんなあやふやな気持ちで、こんなことを言うべきじゃないのかもしれないけど、もしよかったら、また会って欲しい。君という人をもっと知りたいんだ。ダメ・・・かな?」


「・・・わかった。」


その私の返事に、沖田くんはホッとした表情を浮かべる。


だけど・・・これで本当によかったのだろうか。私は複雑な思いで、沖田くんを見ていた。
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