そのままの君が好き〜その恋の行方〜
「そりゃ、俺だって寂しいさ。可愛い妹が巣立って行っちまうんだから。でもそれは喜ぶべきことでもある。俺がお前に教えられたことなんて、確かに大したことじゃ、きっとない。まして業務としての互換性なんかほぼ0だろう。でも、この1年で、お前は本当に成長したよ。お前ならどこに行っても、やっていけるさ。」


そんな俺の言葉を、じっと俺を見つめながら聞いていた三嶋は


「そっか、沖田さんにとって、私はやっぱり妹でしかないんだね。」


「・・・。」


「さ、呑も。今日はトコトン呑んでもらうからね。」


そう言うと、三嶋は目の前のウーロンハイを口に運んだ。


結局、三嶋はベロベロ。放置するわけにもいかず、俺は三嶋を居酒屋から担ぎ出した。


「しっかりしろ。さ、帰るからな。」


「何、言ってるの?夜はこれからだよ、さぁもう一軒行こう!」


「バカなこと言ってんじゃない。」


俺は、タクシー乗り場まで、コイツを引き摺って行こうと思うけど


「ヤダもん、絶対にまだ帰らないから。呑み足りないよ。」


と駄々をこねる三嶋。仕方なく俺は、近くの公園のベンチにヤツを座らせる。


「水買って来るから、ちょっとここで大人しく待ってろ。」


と言って、俺は自販機に走ろうとするけど


「ダメ。側にいて、・・・総一郎。」


俺の服の裾をしっかりと掴んだまま、三嶋はハッキリとこう言った。いきなり後輩から、名前を呼び捨てにされて、驚く俺。


「鈍感。」


「えっ?」


「ううん、鈍感なんじゃない。とぼけてるだけ。私が今日、何で2人きりで呑みたいって言ったか、そして私が今、何を望んでるのか、本当はわかってるのに、気付かないふりして、やり過ごそうとしてるだけ。意気地なし!」


俺、またコイツに意気地なしって言われた・・・。


「女がここまで分かりやすく誘ってるのに、総一郎には、お持ち帰りする勇気もない。」


「おい、三嶋、声がデカいって。」


「三嶋じゃない!」


そう言ってキッと俺を睨む三嶋。


「私が総一郎って呼んでるのに、なんで三嶋なのよ。」


困惑する俺は


「三嶋、落ち着け。お前、大切な彼氏がいるんだろ。」


とたしなめるように言うけど


「そんなヤツとは、もうとっくに別れたよ!」


そう言った時、三嶋の目からは、とうとう涙が溢れ出した。
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