そのままの君が好き〜その恋の行方〜
気が付けば、私はベッドの中にいた。


長いキスが終わり、見つめ合った私達。私は再び近藤さんの身体にその身を寄せる。


「寒いです、和樹さん。」


もう私も、彼を名前で呼ぶことに抵抗はなかった。


「行こうか。」


和樹さんがそう言って、優しく微笑むと、私は静かに肯いた。


そして、彼にいざなわれるままに、ホテルに吸い込まれてしまった私は、濡れた身体を洗い流し、ほんの数時間前までは、自分でも想像もつかなかった姿で、和樹さんの前に立った。


再び和樹さんの唇が私に重ねられる。彼の手が、私の胸元に伸び、その唇は、首筋から、ゆっくりと肩へと這う。


やがて2人の身体がゆっくりと、ベッドの上に崩れ落ちる。自分のすぐ上にある和樹さんの顔。私の鼓動は一段と跳ねる。


(ダメだよ、加奈。絶対にダメ!)


微かに残る冷静な自分が、最後の警告を発している。でもそれは、もはや無力だった。覆っていたバスローブがはだけられ、私の身体はついに和樹さんに完全にさらされる。和樹さんの唇が降ってきて、その唇によって、私の身体は次々と征服されて行く。


もはや引き返す道など、あろうはずがなかった。


私がヴァージンであることに気づいた和樹さんは、一瞬驚きの表情を見せたけど


「ゴメン、許してくれ。だけど、これは遊びじゃない。俺を信じてくれ。」


と私をまっすぐに見て言った。私は目に涙を浮かべながら、肯いた。


それからのことは、あまりよく覚えていない。覚えているのは、彼が避妊具を付けていたことと、激しい痛み、そして何度かのチャレンジの後、ようやく彼を受け入れられた時の感動的な気持ちだけだった。


全てが終わり、半ば茫然と、彼の腕の中で時を過ごしていた私は、ハッと我に返ると、ベッドから身を起こした。


「どうしたの?」


驚いたように問いかけて来る和樹さんの顔を、一瞬見た私は


「帰ります。」


と言うとベッドを降りた。


「えっ?」


戸惑う和樹さんを尻目に、私は急いで衣服を整えると、ドアに向かった。


「待てよ、送ってくから。」


「大丈夫です。失礼します。」


そう言い残すと、私は部屋を出た。


(どうしよう・・・。)


今更ながら、湧き上がって来る後悔。私は泣きながら、ホテルを飛び出した。
< 96 / 177 >

この作品をシェア

pagetop