そのままの君が好き〜その恋の行方〜
(沖田くん・・・。)


悠は知らない、知る由もない。私は沖田くんを裏切ってしまったんだ。


でも、私達の関係って一体・・・?何度かデートを重ねたのは確か。だけど、まだカレカノになったとは言えない。


でも付き合ってたのに、他の男性と関係を結んでしまったのは、やっぱり不誠実だよね。


私は沖田くんが好きだった。それは決して和樹さんの代わりとしてじゃなかった。和樹さんに憧れの気持ちは持ってたけど、妻子あるあの人とどうこうなんて、昨日のあの時まで、私は全く考えて来なかった。


いや、今だって、迷ってる。後悔の気持ちがある。和樹さんとのことは、一夜限りのこととして、やはり沖田くんとキチンとお付き合いした方が・・・そう考えている自分もいる。


でも・・・それは私には、出来る相談ではやはりなさそうだった。和樹さんとどうするかはともかく、沖田くんとお付き合いを続けるなんて、やっぱり私にはもう出来ない。


なぜか、沖田くんとの連絡は、最近滞っている。ひょっとしたら自然消滅・・・?バカ、何言ってるの。あの沖田くんが、そんないい加減なことをするわけはない。


だとしたら、私の口から、キチンとお別れを言おう。それが今の私が沖田くんに出来る、せめてもののことだ。


ようやく考えを纏めた私は、ベッドから起き上がった。全く食欲はないけど、とりあえず何かを口に入れて、身支度を整えて、沖田くんに連絡しよう。


会うわけじゃないけど、パジャマ姿で、こんな話は出来ないし、したくなかった。


でも、いざ掛けようとすると勇気がいった。電話じゃなくて、やっぱり会って言うべきじゃないのか。でもそれはお互い、辛すぎる。じゃやっぱり電話?じゃいつ掛けたらいいの?今?出先で、いきなり電話掛かって来て、ごめんなさいって言われても困るよね・・・。


なんてウジウジ考えているうちに、時間だけが過ぎていく。その間にも、和樹さんから電話やメールが何本も入る。でも私は出られない、自分の考えがまとまってないし、沖田くんにキチンとお別れを言うのが先だから。


気が付けば、夜9時を過ぎてしまった。私はついに意を決して、通話ボタンを押した。


『もしもし、桜井さん?』


聞こえて来たのは、やや慌てた沖田くんの声。


「ゴメンね、今、お話してもいいかな?」


『いや、今はちょっと・・・。』


と言い淀む沖田くんの声の後ろから、別の声が・・・。


『誰から?総一郎。』


『バ、バカ!』


慌てる沖田くんの声が被さるけど、私はこの声には聞き覚えがある。


(三嶋さん・・・。)


こんな時間に一緒にいるんだ、それも沖田くんのこと、総一郎って呼べるような仲だったんだ・・・。


「ごめんなさい、お取り込み中に。失礼します。」


『あ、桜井さん!』


私は慌てて、電話を切った。


(そうなんだ、そういうことだったんだ・・・。)


全てが明らかになった。またしても、私の恋は不幸な結末を迎えてたんだ・・・。


悩み苦しんだ今日1日を返してもらいたい、いや、そんなこと言う資格、私にはないよね・・・。


私はよもやの裏切り返しに、結構傷ついていた。自分のことを、棚に上げて・・・。
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