一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
★諦められない 晴正side
「今日も可愛すぎて辛い……」
昨夜から寝てない為か、独り言が漏れた。シャワールームへ向かう廊下は人気がなく、誰にも聞かれてない筈だ。
西園寺晴正、三十五歳。弁護士。独身。
想い人はいるが、手の届かないところにいる。だから今まで気持ちを押し隠してきた。
この事務所を出て、新しい弁護士事務所を構えるくらい立派な弁護士になれたら、気持ちを打ち明けるくらいは許されるだろうか。そう思って仕事ばかりに熱心になる日々。
彼女が事務所に入ってきた頃からだから、片思い歴は五年目になる。
新人のパラリーガルだった彼女の教育係をしたのがきっかけだ。当時も多忙で大した指導も出来なかったのだが、彼女は自分のために色々と尽くしてくれた。