一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
明日は土曜日。俺は終日予定無し。美月ももちろん休日。
美月が色々と手を回し、掴み取ってくれた休日だと把握している。ここ数日、所長から振ってくる依頼の山は、娘可愛さに俺が家に帰れないようにしてるに違いない。
全部片付けたけど!
これで心置きなく、デートに誘える。
しかし、前に一度食事に誘ったとき、瞬時に断られた思い出が蘇る。あの時はお弁当のお礼に食事でもと思ったのだが、「お気遣いは無用です」と、瞬殺だった。
そういえば、今までも何度か他の弁護士から誘われている現場を目撃したが、どれも見事にきっぱりと断っていた。
今回も、断られるだろうか……。
無理矢理キスをした相手と、どこかに出かけるだなんて、嫌だろうか。でも、明日こそ、君に想いを打ち明けたい。
出先から事務所に戻り、執務室のドアを開けた。もう就業時間は過ぎている。美月は帰宅してしまっただろうか。
「おかえりなさいませ」
美月はパソコンに向かっていたが、執務室の入り口に立つ俺を見て、にっこり笑った。可愛い。
「あ、ただいま、戻りました」
「黄田川様との示談お疲れ様でした」
あの美月が1人で対応してくれた、交通事故の相手方だ。今日、示談が成立した。