一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
 ぽた、ぽたぽた。

 せっかく施してもらったメイクが落ちてしまう、とっても綺麗なドレスが!
 でも涙が次から次へと溢れ落ちてくる。

「詳しく話して?」

 私の手をギュッと握り、お母さんが顔を覗き込んできた。その顔がとても優しくて。

「わ、私、晴正さんにっ、き、きっ、嫌われたかもっ……」

「あらー。そんなことないでしょー。この間、熱烈に抱擁してたじゃない!」

「明日……明日きっと、振られちゃうんですっ。……晴正さんは優しいからっ、今まで我慢していてくれたのかもっ、ひっく」

「あらあらメイク落ちちゃうわね。とりあえずドレス脱ぎましょ。あったかい紅茶でも飲んで落ち着きましょうね。今日は泊まってくんでしょ?」

「はい」

 涙が次から次へと溢れ出てくる。実家に帰って気が緩んだのかもしれない。母の前でまたしても泣くなんて……。

「明日振られるってことは無いと思う。けど、美月はきっと不安なのね」

「……うう」

「泣かないのよー。お姉ちゃんが亡くなった時でさえこんなに泣かなかったわよー? もう、美月ったら。可愛いわねぇ」
< 105 / 142 >

この作品をシェア

pagetop