一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
 
 翌朝は夏の暑さはあるものの、カラッとした雲一つない晴れの日で、まさにお出かけ日和。

 私の心とは正反対のお天気だ。

 私は晴正さんに言われた通り、事務所の玄関前へと重い足取りで向かっている。

 白の肌触りの良いブラウスに、腰にあるリボンが特徴的な薄いピンクのタイトスカート。白のアンクルストラップサンダルは、少しだけヒールがあるせいか、私の重い足音をコツコツ音を立てて強調させている。

 母渾身の甘いデート服も私の心とは正反対。

 私はこれからきっと、人生のどん底へと落ちて行くのだろう。

 家も職場も失うけれど、今の生活は辛すぎる。実家に戻ったら、再就職先を探さねば。落ち込んでいる暇はない。

 そうだ、こんな時こそゲーム……。

 しかし、約束の場所には既に晴正さんの姿があった。

 合わせたかのような白のシャツに、ベージュのパンツ。私服の晴正さんは何度見てもカッコいい。

「美月」

 もじもじしている間に、気づいた晴正さんが声をかけてくれた。
 駆け寄る晴正さんもどこか緊張した面持ちだったので、出会って早々に振られるかと思いきや、私の手を取り歩き始める。

 ナチュラルに手を繋いでしまいましたよ!?
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