一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約

★逃さない 晴正side

「また来ようね」と言った俺に、彼女はとても驚いた顔をした。

 デート一つ誘わない仕事人間だと思われているのか、それとも、俺を振るつもりだったのか。

 だけど今日の彼女はとても楽しそうだった。

 手を繋ぎながら、ゆっくりと進む。時折、人にぶつけまいと手を引くと、少し恥ずかしそうに、はにかみながら俺の方へちょこんと駆け寄る。その姿が可愛くて。

 水族館にして良かった。
 少し薄暗いので、度々ニヤけるこの顔をなんとか隠せたのではないかと思う。

 ぎゅっと握り締めれば、彼女の手が壊れてしまいそうだから、俺は大切に大切に彼女の手を包んでいた。

「美月が良いのなら、俺は何度でも美月とデートしたい。これからずっと、美月とだけ、デートしたいと思ってる」

 俺にしてはよく頑張った。頑張って言語化した。君とだけ。
 君としか、デートしたくないんだ。伝わってほしい。

 だが、彼女は、きょとんとしていた。余程予想外だったのか、それとも困らせてしまったのかも。

 俺は振られるのが怖くて、彼女の返事を待たずに席を立った。

 美月、ごめん。

 逃してやることは出来ない。俺の全てで幸せにするから。
 無理矢理捕まえたりはしないけれど、出来ればずっと俺のそばに。
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