一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
「君、釣書を見ようともしなかったよね」
「美月さんに以外の女性には全く興味なかったので」

 事実だ。嘘は言っていない。だが、未来の義父で、現在の上司にそんな恋愛話をするのが、少し照れくさくてドギマギした。

「あの時の相手さ、美月なんだよね」
「っ!? はぁ?!」

 驚きすぎて変な声が出た。何故大切な娘の縁談を、俺に? というか、あの時美月が電話で話していた、見合い相手って……。

「麗華ちゃんが、『かっこいい弁護士と見合いさせたい』っていうから仕方なく。君なら断ってくれると思って、話したんだ」
「存じ上げませんでした……」
「君が美月に片想いしているのは、何となく気付いていたのもあってね」
「?!」
「でも嫁に出すのはもっともっと後だと思ってたのになぁ。父親って無力……」

 所長がしょんぼりし始めた。

 新事実発覚に驚くばかりだ。俺は美月の見合い相手として選ばれていたのか……。
 でも、その見合いを断る為に偽装結婚を持ち出して、何故か同棲することになって。遠回りしたのか近道だったのか分からない。

 だけど、俺の想いに感づいていた所長が、俺を縁談相手に選んだということは、少しは認めてくれていたということだろうか。

「言っとくけど、美月を泣かすんじゃないぞ」
「……必ず、幸せにします」

 じとっとした目で所長が俺を見る。やはり、父親のジェラシーで俺に仕事を振っているらしい。

「仕事いっぱいあげるから家に帰らないでくれ」
「ちゃんと仕事もしてちゃんと帰ります!」

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