一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
「祝い酒だ! さぁ飲もう」

 馬場社長は晴正さんとお酒を酌み交わしている。私は横でニコニコと顔を作りながら、自分の中のとんでもない欲望に驚いていた。

 晴正さんと本物の婚約者になりたいだなんて。

 その気持ちに囚われて、私を睨みつける瞳には全く気付いていなかった。



 挨拶もひと段落したところで、私はお化粧室へ。晴正さんは奈良崎先生に戦況を報告している。

 それにしても、あっけなくご納得いただけたように思う。晴正さんのお話では、婚約者がいても気にせずアプローチされているようだったが……。
 やはり御令嬢ご本人が、不在だったせいだろうか。今日このパーティにはいらっしゃるはずなのに、そういえばまだご挨拶していない。

 そんなことを考えながらメイクを直しているところへ、大変美しい女性が声を掛けてきた。

「少しよろしいかしら」
「はい?」

 振り返ると、その華やかな美しさに圧倒される。身長も高く、きらびやかで身体のラインを強調するオレンジのドレスがとても魅力的だ。 
 明るい色の長い髪はサイドに流され、キラキラした髪飾りが彼女の美しさを引き立てている。モデルさんだろうか?
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