一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約

「貴女が西園寺先生の婚約者?」
「は、はい、そうですが。何か?」

 咄嗟に設定を思い出して、婚約者だと返事できた。すると、みるみる美女の顔が歪んでキッと睨みつけてくる。おお、美女に睨まれると大迫力!

「ひどいわ! 私たち、お見合いすることになっていたのに! 突然婚約者が出来たからお見合いしませんって断られたのよ」

 なんと! お見合いのご予定があって、しかもそれをお断りしていたとは!
 それは存じ上げませんでした……。

「前からずっとずっと西園寺先生が好きだったの。お父様には、他に目を向けろと言われて、他の方々ともお会いしたけれど、西園寺先生より素敵な方はいなかった。どうして? どうして横取りするのよ?」

「ご、ごめ、んなさ……」

「あなた達本当に愛し合ってるの? 結婚式はいつなのよ! 私を振るための演技なら、早く別れて!」

 演技だと言い当てられて、動揺した。
 美女はその華やかなお顔を歪ませて、目にいっぱい涙を溜めている。私の前で泣くものか、と必死に我慢しているようで……。心が痛い。

「わ、わたし……私は晴正さんが、本当に、好きです。嘘ではありません」

 それだけは本当のことなので、その真実だけを述べるので精一杯だった。
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