一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
 昔から何故か女性に言い寄られることが多かった。

 高校時代は剣道部部長の肩書き、大学時代は有名大学の法学部生というブランド、弁護士になってからは高収入に釣られて寄ってくる。

 しかも、一ノ瀬ほど整ってない顔は親しみやすさもあるのか、遠目で眺めるわけでもなく、やたら積極的な女性が多かった。

 ラブレターを貰っても、告白されても、待ち伏せされても、心は動かなかった。

 付き合ってみてもそれは同じ。

 結局は部活ばかり、勉強ばかり、仕事ばかりで、彼女との時間は減る一方で。「貴方は私のこと興味ないのね」と振られるのだ。
「貴方が寂しくさせるから、違う人を好きになってしまった」と言われたこともある。

 彼女達を引き止めたことはない。
 責めたこともない。
 またか、とは思ったが、相手の男性に酷く嫉妬したりはしなかった。

 今思えば、彼女達のことを心から愛してはいなかったのだ。
 スペックばかりを好きになる彼女達と同じように、俺も誰でも良かったのかもしれない。
 それでも浮気をしたことも心変わりを申し出たこともなかったが、いつも振られた。

 だが、美月は違う。

 心から恋い焦がれている。どうしても彼女じゃなくちゃダメだ。
 もし、彼女に他の男がいたら……。
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