一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
 ピンポーン

 今日も、朝から聴こえるインターフォン。
 誰が来たのか、家族全員が分かっている。

「姉ちゃんいつまで意地はってんだよ。振るにしても会ってやれよ」

 うんざり顔の守くん。

「いいのよ! 女心が分からない男は放っておけば!」

 何故かとても怒っている母。

「……美月、あいつ、ここに来る時間をやりくりする為に、事務所に泊まり込んで仕事してるみたいなんだ。食事もろくに摂ってない」
「!!」
「専属のパラリーガルも突然長期休暇を取得してるしな。あいつこのままだと倒れるぞ」

 父が晴正さんの現状を、その日初めて語った。予想はしていたけれど、多忙な中、無理をしていると知って、胸が苦しくなる。

「ダーリン……それって上司のあなたがどうにかすることでしょ! 美月のせいみたいに言わないで!」
「あっ、いや! そんなつもりじゃ! 麗華たんと喧嘩したいわけじゃないんだっ! 怒らないで! 麗華ちゃん! 愛してるから!」
「それとこれとは別よっ! んもうっ」

 私のせいで、家族の雰囲気まで悪くしてしまった。守くんも私が突然帰ってきて迷惑しているのかもしれない。自己嫌悪でまた泣きそうになる。

「わ、わたし……お部屋に、戻ります……」


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