一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
「じゃあ、俺と婚約してることにしたら?」
我ながらよく思いついた。発言しながら、これは名案だ! と思っていた。
「へ?」
いつもきちんとしている高峰さんから、すごく気の抜けた声が発せられた。それっぽい理由を頭の引き出しから大急ぎで取り出して並べていく。
「結婚したくないんだろ。俺も周りがうるさくて。そろそろ身を固めたいなと思ってたんだ。でもお嫁さん探しする時間もなくて。ほとぼりが冷めるまで、婚約者として振舞ってくれると助かるんだけどな」
「わ、私が?! 西園寺先生の?!」
「うん。代わりに俺が高峰さんのご両親にご挨拶するよ。結婚を考えている彼氏がいると分かったら、見合いの話も諦めてくれるんじゃない?」
あ、ものすごく悩み始めた。
高峰さんは頭を抱えて「えぇぇ……」と呟いている。まさに混乱中。そのまましゃがんで小さく丸まっていく。そんな姿も可愛い。
弁護士は機転を利かせ、その場で論を立てていく技術に長けている人が多い。
俺だって弁護士の端くれだ!
このまま高峰さんを説得しよう!
婚約者として振る舞って周りから固めてしまおう!
所長のことは置いておいて。
これは、チャンスだ!