一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
「きゃー!良かったわー!」

「おかあさん?!」

 ドアが盛大に開いたかと思うと、両親と守くん、藤島さんがいた。あ、笹川さんまで!

 もちろん私たちは、抱き合った体勢のままだったので、思わず飛び退く。
 父が鋭い目つきで晴正さんを見ているが、母はお構いなしだ。

「さっ、じゃあ早速、式の日取りを決めましょ! ドレスも何着作る!? 招待状も準備しなくちゃ! 忙しくなるわよー!」

 晴正さんは、父と母の方を向いて背筋を正した。そして深々と頭を下げる。

「この度は、勘違いとはいえ、お嬢さんを悲しませてしまい、大変申し訳ございませんでした!」
「は、晴正さん!?」

 突然の謝罪に驚く。両親も驚いているようだ。

「まだまだ未熟者ですが、これから先、美月さんを悲しませないよう精進します! 一生大切にしますので、美月さんと結婚させてください!」

 さっきまで、母がノリノリで結婚式の準備をしようとしていたのに、改めて両親に結婚の許しを得ようとしてくれている。
 その誠実さに、胸を打たれた。

 私も晴正さんの横で一緒に頭を下げる。

「……美月は、血の繋がりは無くとも私たちの大事な娘だ。何でも遠慮してしまう子だから、君が必ず汲み取って大切にしてくれ。……二人で必ず幸せになりなさい」

「はい! ありがとうございます!」

「お父さん……」

 父が涙ぐんで微笑む。母はにっこりして私にウインクしてくれた。守くんも呆れ顔だが、笑っている。
 私の家族が、笑っている。

 そして──

 晴正さんも、私の家族になる……。

 想像するだけで、嬉しくてたまらない。

「そうと決まれば! とりあえず婚姻届ね! ダーリン! 役所に行ってもらってきて! 書き損じても良いように二枚!」

「えっ? 俺?」
「姉ちゃんよかったねー」
「お嬢様! おめでとうございますー!」
「涙で前が見えません!」

 皆に祝福されながら、晴正さんを見上げると、甘い微笑みが返ってきた。

 そして、晴正さんは、私の耳元に口を寄せ「……愛してる」と告げてくれた。
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