一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
★棚から牡丹餅 晴正side
土曜日の昼下がり。俺は高級住宅街の一角にスーツ姿で立っている。いよいよ、高峰さんのご両親にご挨拶に伺う日がやってきた。
事前に何度か打ち合わせと称して、二人で作戦会議を開いた。高峰さんがプライベートのことについて語ったのは、この五年で初めてのことで、それだけで一歩前進した気がしていた。だが。
目の前には、白壁に包まれた、大豪邸。壁のせいで全容は掴めないが、この大都会にこれだけの土地を持つということは、それはもう大富豪でしかない。
(高峰さんに事前に住民票とか戸籍謄本とか見せて貰えばよかった……大富豪の娘だなんて聞いてない)
横には清楚な水色のワンピースに身を包んだ、超絶可愛い高峰さん。
目眩がしそうなくらい夢のような展開だが、弁護士として、彼女の婚約者として、浮かれず騒がず役目を全うせねばならない。
ここで俺が気に食わないと追い返され、彼女が無理やり見合いをする羽目にならないよう、今日は絶対に失敗出来ない!
「じゃ、じゃあ、押すよ」
「はい、よろしくお願いします」
俺は緊張しつつも、その立派なインターフォンを押した。