一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約

☆困りました


「いや、すごかったね! おかあさん。本当に引越し完了しちゃったね!」
「本当に、申し訳ありません……」

 お見合いを中止するためだけの偽装婚約だったはずが、急遽同棲することになってしまい、私は謝罪の気持ちでいっぱいだった。

 挨拶に実家へ行ったのが午前十一時。
 六時間後の現在、西園寺先生のマンションにダンボールごと送り込まれてしまった。

 先生のマンションは一人暮らしにしては広い3LDK。そのうち一部屋は完全に空き部屋だったそう。

 事務所に近いことを優先して選んだら広いお部屋になったそうだ。人気弁護士となると資金が潤沢なのだろう。

 そういうわけで空き部屋だった一室を間借りして、今までの一人部屋を再現したような形になった。

 ただし、オタクグッズを隠して。

 実家の私室はアニメDVDや少女漫画、二次元のイケメンの方々が立ち並んでいる素敵なお城だった。
 誰にも見られたくなかったが、お引越しのプロ(女性の方五名)のみにお手伝いいただき、どうしても持ち込みたいオタクグッズとそうでないものに分類して梱包。先生には自宅待機していただいてなんとか事なきを得た。

 そして、それらは今、荷解きせずダンボールのまま部屋の隅に積まれている。

 この同棲とやらも一時的なものだろうし、ほとぼりが冷めるまでは、このまま荷解きせず何処かに置いておけば……

「よし、荷解きするか!」

「へ!?」

「だいたい片付けてくれたけど、いくつかダンボールはまだそのままだろ。手伝うよ。それで明日は足りないものとか買いに行こう」

「い、いえ、これは、不用品だったりで、あっ、でも思い出とか思い入れとかがありまして! 捨てるに捨てられず! 実家に送り返そうか迷ってるところなので! 荷解きは不要ですっ!」
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