一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約

 土下座しようとしたのに、一瞬で先生に起こされてしまった。

「俺はちっとも迷惑だと思ってない! お母さん達もお怒りじゃなかったし、お見合いを平和的に中止に出来たんだ。よかったと思ってるよ」

 肩に手を置いて、土下座を止めた態勢のまま。前を向くと、正面に先生の顔がある。その近い距離にドキッとした。

「……だから今度は、高峰さんが俺に協力してくれる番だよ」

「私が、ですか?」

「うん。最初に言ったろ。周りがうるさくて身を固めたいって。俺も見合いや娘を紹介したいとか、色々勧められて困ってるんだ。だからそういう場面で君の名前を出したい。必要があれば、対外的なパーティにも婚約者として同行してほしい。」

「パ、パーティ!? わ、私に務まるでしょうか? 」

 パーティは両親の仕事関係で何度か行ったことがあるが、いずれも壁の花となり、誰とも話さず帰宅するばかり。
 男性にエスコートされている女性は、美しく身なりも綺麗で、笑顔で、輝いているイメージだ。私なんかに務まるのだろうか。
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