一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
「男性が苦手なら、まずは俺に慣れてみようよ。疑似体験みたいな感じで、恋人ごっこ、みたいな。一緒に暮らしてたら、忙しい俺でも練習に付き合えるし! ね!」
「慣れる練習……ですか。でも、私の両親だけならまだしも、他の方にはバレてしまう気がします」
「確かに高峰さんは綺麗だし可愛いし、俺にはもったいないって思われるかもね」
「ぎゃ、逆です!」
「はは! でも一緒に暮らすことで親密な雰囲気が出せたら、他の男と俺は違うって示せるんじゃないかな。だから、俺に協力するために、この同棲を受け入れてもらいたい。……どうかな?」
なるほど。男性への苦手意識も、先生に慣れれば改善されるのかもしれない。何より先生にこれだけご迷惑をお掛けしているのだから、私に出来ることは全て力の限りしなければ。
「……分かりました。先生に恩返しが出来るなら」
「ありがとう。俺も、見合いじゃなくて、ちゃんと好きになった子と恋愛して結婚したいんだ。だから、助かる」
先生も私と同じなんだ……。そう思うと、とても嬉しい気持ちが溢れて、先程までの沈んだ不安や罪悪感が少しだけ軽くなった。
「……その笑顔、反則」
先生の耳が赤く色づき、そう呟いたことを、私は気づかなかった。