一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
一度掴んだ彼女の腕に、今度は優しく手を添えた。そしてスルスルと下へ滑らせ、小さくて少し冷たいほっそりとした手を、あくまで優しく握った。すると、彼女の顔が真っ赤に染まる。可愛い。
「あ、あの、私は朝ご飯の支度がありますので……」
手を繋いだ状態で、彼女は顔を赤らめたまま言った。手を振りほどいたりしないのは、彼女の優しさだろうか。俺への好意は微塵もないのかな。そう思うと少し欲が沸いて、おねだりをしてみることにした。
「朝ご飯兼昼ご飯にしよう。買い出しついでに外食で。俺は今からちゃんとベッドで寝なくちゃいけないから、美月は添い寝して?」
混乱顔の彼女の手を握ったまま、寝室までエスコート。横になると、手を繋いで寝ていてほしいと言って、目を閉じた。一晩中仕事をしていたせいか、もしくは彼女の手の温もりが心地良かったからか、昨晩の緊張が嘘のようにすぐに眠れた。