一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
コーヒーを飲み、目頭を押さえて眠そうにしている先生。
「……先生、もしかして昨晩帰宅されてないんですか?」
よく見ると、ワイシャツの色が昨日と一緒のような……。それにしても、昨日と服装が同じでもイケメンは絵になる。
「ばれたかぁ。……うん、ちょっと今やってる案件で気にかかるのがあってね。裁判にまで持ち込まずになんとかしてあげたくて」
示談がまとまらず、揉めに揉めている例の離婚案件だろう。調停でまとまらなければ裁判に。裁判になればさらに長期化する上、費用もかさんでいくのだ。
これからシングルマザーになる決意をされた依頼人とそのお子様を思えば、早期決着を望む気持ちはわかる。
「何かお手伝いできることはありますか?」
「ありがとう。じゃあ、うーん、ちょっとこの資料と、あ、あった……この判決文のコピーをお願いしようかな」
西園寺先生の机は資料でいっぱいだ。過去の判例や相手方の不貞証拠資料がどっさり積んである。
「では、見やすくまとめておきますね。あとお片付けもします。今日は午後から打ち合わせもありますから、一度帰宅されてはいかがですか?」
「うーん、いいや。シャワールーム行ってくるよ」
なんとこのビル、シャワールームがある。それだけでなくジムやカフェ、バーなどが併設された複合ビルなのだ。