一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約


「それにしても、所長ったらビックリしたでしょうねぇ〜」
「母の勢いが止まらなくて……」

 場所を愛海さんのご自宅に移して、女子トークに花を咲かせている。愛海さんは奈良崎先生と既に一緒に暮らし始めており、晴正さんとは別のマンションだが、事務所近辺の高級マンションに住んでいるのだ。

 奈良崎先生も今日はお仕事ということで、こちらにお邪魔させてもらった。シンプルな内装だがお花が飾ってあったり、可愛い柄のお揃いのコースターだったり、新居からお二人の仲睦まじい様子を垣間見ている気がして、座っているだけで少しこそばゆい気持ちになって来る。

 でも羨ましい。

「それで西園寺先生のおうちに転がり込んだのね!」

 結局私は全てを愛海さんに吐き出して、今後のことを相談することにした。しかし、添い寝や抱擁のことはまだ打ち明けておらず……、思い出してまた顔が真っ赤になってしまった。

「えーと、何かされた?」

 さすが愛海さん。すかさず突っ込まれてしまう。

「あっ、いえ! 大丈夫です! 西園寺先生は紳士でした!」

 慌てて先生を擁護した。先生は無実です! しかし愛海さんは疑っているのか、ニヤニヤと笑っている。

「ほーお。ふふふふ。やーっと西園寺先生も動いたってことね! ふふふ!」
「??」
「こっちの話! とにかく、偽装で始めた婚約ってことは所長には絶対内緒ね! というか私たち以外誰にもバレない方がいいわ! 西園寺先生モテるから」

 そうだった。西園寺先生も、奈良崎先生と並んで女性に人気の弁護士だ。もし偽装だと知ったら、沢山の女性に恨まれるに違いない。
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