一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
「……このまま、色んな方に嘘をついて、西園寺先生の優しさに甘えてしまっていいんでしょうか……。おうちに転がり込むなんて、こんなご迷惑をお掛けすることになるなんて!」
「だから交換条件として、西園寺先生の婚約者として振る舞うんでしょ? 先生的には、こーんな可愛い子を婚約者ですって言いふらせるんだもん、全然迷惑じゃないわよー!」
「私はただのオタクで、男性とお付き合いしたこともないですし、お役に立てる気がしません!」
自分で言って悲しくなるが事実だ。しかし、愛海さんは明るく笑い飛ばしてくれた。
「だーいじょうぶ! 美月ちゃんなら出来るわよ! それに嘘が嫌なら、本当にしちゃえばいいじゃなーい!」
愛海さんの言葉が瞬時に理解できず、思わず首を傾げる。すると愛海さんは、ずいっと私の方へ身を乗り出し勢いよく爆弾発言をした。
「だからー、西園寺先生の本当の婚約者の座をゲットしちゃえばいいのよ! そして本当に結婚しちゃえば、嘘じゃなくなるわよ♪」
「えええええ!」
「なかなか優良物件だと思うけどな〜。高収入、高学歴、高身長! 遊んでる様子も無いし、クライアントにも誠実だし。うちの事務所の出世頭じゃない!」
「おこがましいです! 私にはもったいないです……。釣り合わないです……」
「そう?美月ちゃんだって、容姿端麗で可憐な見た目だし、優しいし可愛いし奥ゆかしい大和撫子じゃない! その上、大手弁護士事務所所長とやり手アパレル会社社長の娘! 大金持ちよ!」
愛海さんもお世辞を言うんだなぁと心の中で卑屈な私が呟く。
「両親はすごいですけど、私は……」
「ねえ美月ちゃん」
愛海さんが私の言葉を遮って、真剣な眼差しで語り始めた。