一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
「私ね、奈良崎くんと付き合ってみて、すっごく幸せだなって思うのよ。自分以外の誰かに頑張ってるねって認めてもらえて、私を丸ごと好きになってもらえて。誰かの温もりが、こんなに心地いいなんて知らなかった。そして、知らなかった頃にはもう戻れないなって思った」
そう話す愛海さんは、やっぱりとても綺麗だ。キラキラと輝いて、羨ましい気持ちが湧き水のように心にじわじわと湧いて出てくる。
そして、私は今朝の晴正さんの温もりを思い出していた。
「それだけが幸せじゃないってわかってるわよ。仕事で成功した時とか、大好きな本を読み終えた後とか、美味しいものをたらふく食べた時とか、幸せを感じられることって沢山世の中に溢れてる。それがあれば充分な人もいると思うわ。それは間違いじゃない」
私の漫画やアニメ、そしてゲームに支えられている日常。それさえあれば、私は幸せ。
「だけど、美月ちゃんはゲームしてときめいて、その顔がとっても可愛くて。あの顔を独り占め出来る男性が現れたら、その人は私みたいに幸せになれるんだろうなって思ったのよ」
「え……?」
それは思いもよらない言葉だった。私が誰かを幸せに……?
「ねぇ美月ちゃん。人から与えられる幸せもあるし、与えることもきっと出来るよ。美月ちゃんは出来る。だから今は、西園寺先生とちゃんと向き合ってみたら? 美月ちゃんが自然に話せる男性って今のところ西園寺先生だけでしょ?」
「……はい……」
優しい口調だが、何故か反論出来ない愛海さんの説得に、私はただ一言頷くことしか出来なかったのだった。