一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
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『先輩、彼氏出来たんですか?』
仕事帰りにエレベーターで一緒になった彼が、突然前置きも無しに話しかけてきた。
不安そうな目で私を見つめている。
どうしてそんな顔してるの?
『そんなわけないでしょ。残念ながら仕事が恋人』
私はこんな時も先輩ぶることしか出来なくて、視線をそらしてしまった。
『じゃあ、俺にもチャンスがあるってことですか?』
『えっ』
その瞬間、私の視界は彼のワイシャツでいっぱいになった。
抱きしめられているのだと気付いた時には、彼の腕がきつく私の背中にまわされていた。
『好きです。先輩のこと。ずっと前から見てました』
耳元で、願っていた、欲しかった言葉が、恋い焦がれていた彼の声で囁かれた。
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A.「私の気持ち、知ってるくせに」
B.「私も……大好き」
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待ちわびた後輩キャラからの告白。普段の私ならここでキャーキャー叫んでしまうが、この展開にキュンとしながらも、今朝の事を思い出してしまった。
逞しい腕と硬い胸板、耳元で聞こえる晴正さんの声。
今日一日で何度も思い出してしまった。添い寝に抱擁なんて、わたしには刺激が強すぎたのだ。晴正さんに抗議すべきだろうか。
結局ゲームは進められないまま、自室の床で1人悶々と過ごして夜は更けていった。