一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約

★言えなかった気持ち 晴正side

 朝日が昇るにはもう少し時間が必要な深夜。こんな時間まで仕事をするのはよくあることで、その場合は事務所に泊まることが多い。自宅は近いが、帰宅するのが面倒だからだ。

 だが、今日からは違う。

 何故なら、棚から牡丹餅よろしく、長年片思いをしていた相手との同棲が始まったのだから! どんなに遅くなったって、絶対帰る!

 本当はもっと早く帰るつもりだった。だが、所長に実力行使されたのだ。奥さんを説得出来ないからって、俺たちの同棲生活を邪魔するなんて!

 これから毎日、こんな風に仕事を山積みにしてくるんだろうか。いや、絶対負けない! 美月との甘い同棲生活を死守しなければ!

 そんな決意を胸に帰宅したが、案の定、美月は眠っているようで部屋は静まり返っていた。キッチンのあるリビングに行くと、良い匂いが充満している。恐らく料理をしたのだろう。冷蔵庫を開けると、想像を超える量の惣菜が美しく収納してある。

(た、た、食べたい!)

 少しなら食べてもバレないかも、と思いつつ、翌朝美月に「つまみ食いはお行儀が悪いです!」とか、「勝手に食べるなんて酷い!」とか、もし言われたら立ち直れない。美月は言わないとは思うけど。

 俺の目標はこの同棲で美月に好きになってもらうこと! あわよくば本当に婚約して結婚したい!

 その為には間違えられない。嫌われないように気をつけなければ。よって、美月の手料理をつまみ食いするのは諦めた。
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