一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約


 せめて寝顔を少しだけ拝みたいと思い、寝室を覗いた。が、美月が居ない。まさか同棲が嫌になって実家に帰った!?

 一瞬で嫌な汗が出る。

 家中を駆け巡り彼女を探す。美月の部屋を余裕なく開けると、電気を付けたまま、美月が床に横たわっていた。

「っ! 美月!?」

 倒れているのかと駆け寄ると、スヤスヤ寝息を立てている。つまり、ベッドは俺のために空けておき、自分は床で寝ようと思ったのだろう。その献身的で健気な姿にまたキュンとする。

 ふと、彼女の右手が携帯を握りしめていることに気付いた。誰と連絡を取っていたんだろう。所長と不倫がデマだったとして、彼女がはにかみながら連絡を取る相手は誰なのか。見合いを止めてはくれない、または止められない相手。許されざる恋なのか、彼女の片思いなのだろうか。

 昨日、腕の中で赤くなっていた彼女を思い出す。俺のこと、少しは意識してくれただろうか。それとも嫌われてしまっただろうか。

 優しく起こさないように抱き上げ、寝室に運ぶ。身体が冷えていたので、掛け布団をしっかりかけた。

「おやすみ、美月。……好きだ」

 届いてほしくて、言いたくて堪らなかった言葉を口に出した。いつか、起きている彼女に、面と向かって伝えるんだと心に決めて。

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