一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
 西園寺先生が部屋を出てから、私は片付けを済ませ、メールチェックをして、頼まれた書類を作成していた。

コンコン、ガチャッ

 返事をする前に、ノックした主は部屋に入ってきた。

「美月ちゃんやっほー!」

 ウェーブしたロングヘアは一つに束ねられ、意志の強い綺麗な顔立ちをより際立たせている。鮮やかな青色のワンピースに身を包んだその人は、いつも通り軽快なヒールの音を響かせ、明るく声をかけてくれた。

愛海(あみ)さん! おはようございます」

 この快活な美人は、宝田愛海(たからだあみ)さん。三歳年上のパラリーガルの先輩だ。いつも西園寺先生が居ないタイミングを見計らって、私の様子を見にきてくださる。

「西園寺先生ったらまた徹夜?」
「そうみたいです……。先程シャワールームに向かわれました」
「働き者よねー。美月ちゃんは無理しちゃダメよ! つられて残業とかしないように!」

 そういう愛海さんも働き者で、この事務所の古株弁護士を複数担当しているスーパーパラリーガルだ。秘書と雑用業務を複数なんて、今の私には考えられない。
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