一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約

「晴正さん? 朝ですよ?」

 寝室にそっと入って、カーテンを開け、そっと声をかける。昨夜はとても遅くに帰宅したようだった。まだまだ寝かせてあげたいが、今朝はクライアントと打ち合わせが入っている。

「はるまささーん! あさですよー!」

 わざとベッドから離れた位置で叫ぶ。寝起きの晴正さんは、色んな意味で危ないのだ。
 間近で寝起きの晴正さんを見てしまった時、心臓が壊れるかと思った。可愛らしい寝癖と溢れ出る色気、極上の三次元イケメンスマイルは破壊力がすごい。

「……んん〜」

 そうしてやっと晴正さんが、ゆっくりと目を開けた。

「……おはよ、美月」

 出ました! イケメン寝起きスマイル!! お仕事中はしっかりセットされている黒髪が無造作にくしゃっとして、眠たげな瞳がとってもセクシーだ。

「おっおはようございます。朝ですよ?」
「もう少しだけ」
「朝ごはん冷めちゃいますからっ!」
「あと二分」

 お仕事をバリバリこなすかっこいい晴正さんの、こうした可愛らしい面を知ると、そのギャップにキュンとしてしまう。
 でもここで引き下がってはいけません!

「今日は朝から外出される予定ですよ! もう起きないとっ」
「むり」

 頑なにお布団から出ない晴正さん。晴正さんが夜通し仕事をすることが多いのは、一度寝付くと起きられないからなのでは……。

 そうして私はあと五分だけ待って、漫画でしか見たことはなかったが、秘技フライパン叩きを実践してみたのだった。
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