一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
「落ち着いた?」
温かいコーヒーを私に手渡しながら、晴正さんは心配そうな顔で私を覗き込む。
ここは晴正さんの執務室。応接スペースのソファにエスコートしていただき、コーヒーまで淹れていただいてしまった。なんだかパラリーガルとしても偽者の婚約者としても、不甲斐ない……。
「お恥ずかしいところをお見せしました……。もう、大丈夫です」
晴正さんは、何故か私の真横に座った。お向かいのソファも空いてますよ?
「怖がらせた……よな? ごめん」
「いえ! 晴正さんではなくて……。たぶん、黄田川様が事務所にいらした時、激昂していて……だ、男性が、苦手なので……。大きな声がちょっと怖かったんです。気を張ってた分、晴正さんに会ったらホッとしてしまって……」
「……本当にごめんな」
真横に座る晴正さんが、私の手をそっと握って見つめてきた。最近、晴正さんの距離感がおかしい気がする。
「いえ! 何故か分かりませんが途中からとても真摯に私の話を聞いてくださって! 示談になりそうで良かったです!」
「裁判が回避出来て、クライアントも喜ぶよ」
未だ手を握った状態で、晴正さんは私の顔を見て微笑んだ。このままでは手汗が……!!