一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
* * *
後輩である彼は、人懐こくて愛想も良く、更にイケメンなので、営業先でも社内でもモテている。
分かっていたことなのに。
今日は彼の誕生日。
今日に限ってとても気分が落ち込む自分に、嫌気がさす。
『もっと器用に産まれたかった!』
普段全くしないお菓子作り。
挑戦したものの、人にあげられるものにはならなかった。形も色も匂いも悪く、味もイマイチ。
結局、出来上がったケーキは冷蔵庫へ。私に今夜食べられる予定だ。
予め最悪な事態を予測して、お洒落な万年筆を購入しておいたが、今夜の約束はしていない。彼は一日中営業に回る予定で、仕事中かもしれないのにプライベートの連絡をするのも気が引けた。
そして、彼のデスクにはプレゼントの山。
可愛いラッピングが並んでいて、見ているだけで悲しくて。
モヤモヤしながら終業まで過ごし、彼にプレゼントを渡せないまま、私は帰宅してしまったのだった。
*
ピンポーン
インターホンの画像を見るなり玄関へ走った。なんで?! 来てくれるなんて!
ドアを開けるなり、彼が私を抱きしめ、優しくキスをしてくれた。そして不安げな瞳を揺らしながら、私を見つめてくる。
『先輩、俺の誕生日、祝ってくれないの?』
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A『祝いたい! プレゼントも用意してるの!……でも渡せなくて』
B『……沢山貰ってたから要らないかなって……』