一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約

 花火大会まであと一週間となったある日、私は珍しく愛海さんと夕食を共にしていた。

 今日は、奈良崎先生と晴正さんに、揃って接待が入っており、私が愛海さんの家にお邪魔している。

 お洒落なランチョンマットの上には、愛海さんお手製カルボナーラ。上質なベーコンの塩気が効いて、とっても美味しそうだ。

 ラタトゥイユ、コンソメスープに、バケットまで! 美人は夕飯もお洒落ですね!

 私が感動している間に、愛海さんはイライラした面持ちになっている。

「今日の接待相手、誰だか知ってる?」
「確か、馬場コーポレーションの社長ですよね?」

 馬場コーポレーションは、日本全国にホテルや観光施設を有する大企業。その法務部顧問として、我が法律事務所が名を連ねている。

「そう。そしてその娘も同席するんですって! 何でも最近娘を色々連れ歩いて、将来の婿養子を探してるって噂よ! 信じられない!」

「お見合いみたいですね。でも奈良崎先生はもう結婚式間近ですし、心配ないのでは?」

「でも、その娘さんとっても綺麗らしいのよ! 現役モデルらしいし……」
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