一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約

「花火大会、マンションから観えるんだ。だから……」
「きゃー! 花火を観ながら告白? 素敵ね!」

 愛海さんのテンションの上がり具合が気に食わないのか、奈良崎は不満顔だ。

「俺だって今日愛海ちゃんに告白する! このマンションからもみえるし!」
「やだ! 涼ったら! この流れで拗ねないでよー」
「はははっ!」

 笑いながらも、内心は美月のことばかり。
 二人のように、もっと心の距離を縮めたい。
 俺だけを見てほしい。

 その後も、しっかり応援されて、決意を固め、二人の新居をあとにした。



 奈良崎のマンションを出て、すぐのことだった。

 そこは歩道がなく、車二台がギリギリ離合出来る程の広さ。だが、交通量は少なくない。俺は車の有無を確認しながら道の端を歩いていた。

 ふと目の前に、小さな男の子が立っていた。彼の手からボールが落ちる。ボールはそのまま、道路へ転がっていく。彼はそれを追って──

「危ない!」

キキーッ!!!

 そのブレーキ音を聞いた時には、身体は道路の方へ飛び出していた。

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