一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
「花火大会、マンションから観えるんだ。だから……」
「きゃー! 花火を観ながら告白? 素敵ね!」
愛海さんのテンションの上がり具合が気に食わないのか、奈良崎は不満顔だ。
「俺だって今日愛海ちゃんに告白する! このマンションからもみえるし!」
「やだ! 涼ったら! この流れで拗ねないでよー」
「はははっ!」
笑いながらも、内心は美月のことばかり。
二人のように、もっと心の距離を縮めたい。
俺だけを見てほしい。
その後も、しっかり応援されて、決意を固め、二人の新居をあとにした。
*
奈良崎のマンションを出て、すぐのことだった。
そこは歩道がなく、車二台がギリギリ離合出来る程の広さ。だが、交通量は少なくない。俺は車の有無を確認しながら道の端を歩いていた。
ふと目の前に、小さな男の子が立っていた。彼の手からボールが落ちる。ボールはそのまま、道路へ転がっていく。彼はそれを追って──
「危ない!」
キキーッ!!!
そのブレーキ音を聞いた時には、身体は道路の方へ飛び出していた。