一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
一通り検査も終え、何も問題ないと判断された私は、翌日晴れて退院することになった。
晴正さんも面会に来てくれていたが、父が追い返したそうだ。
気持ちを自覚した今、どんな顔で会えば良いか分からないので、少しだけ心の中で父に感謝した。
でも会いたい気持ちもある。
早く、あの二人の家に帰りたい、でも逃げ出したい、恥ずかしい気持ち。
翌日は、父は仕事、弟は学校で、退院は母が付き添ってくれた。
母も社長として仕事があるだろうに……。申し訳ないけれど、とても有り難い。
「美月、このまま実家に帰ってくる?」
入院時の荷物をまとめ会計を済ませた後、病院の玄関へと続く通路を歩きながら、母が尋ねてきた。
これ以上、母や父の手を煩わせたくない。そして、私……晴正さんに、会いたい。
「ううん、晴正さんのおうちに帰ります……」
「そう。じゃあ、気をつけて帰ってね!」
「……え?」
見ると、晴正さんが病院の玄関前に立っている。私たちにはまだ気付いてないようだ。
身体に風が吹き抜けたような、全く新しい何かになってしまったような気分だ。だって、彼だけが特別に見える。
私に気付いた晴正さんは、余裕のない焦った顔をした。
まさか、仕事の合間に急いで来たんだろうか。私は思わず駆け出した。