一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
 晴正さんの車に乗りこみ、私達はマンションへ向かうことに。

 密室に二人きりだと意識してしまって、ドギマギしてしまう。恋心を自覚した今、今までどんな風に過ごしていたのか全く思い出せない。

「きっ、今日はお仕事はっ、おやすみですか?!」
「うん。休みをもぎ取ってきた。所長に仕事押し付けた」
「ええっ! 父に務まるでしょうか……」
「そっち? あははは! まぁなんとかしてくれるよ」

 また沈黙。

 もしかして、『事故に遭ったと勘違いして倒れる』なんて、私の気持ち、バレバレなのでは? それで反応に困っているのでは?

 晴正さんが求めていたのは、偽装婚約してくれる相手であって、本気の気持ちは迷惑なのかもしれない。

 私は縁談避けの為の、偽装婚約の相手。

 それに徹さねば、あの家に置いてもらえないのだろうか。貴方のそばに居られなくなるのだろうか。

 聞けるはずもない質問を、心の中で繰り返しているうちに、マンションに到着した。

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