一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
★キス 晴正side
美月が退院して一週間が過ぎた。
あれから出張や裁判が重なり、事務所に泊まり込むことも多く、なかなかじっくりと話せていない。
勿論、家でしっぽり飲む約束も果たせぬままだ。
パラリーガルとして働く彼女は、実に事務的で、プライベートな話題に持ち込めない。俺にその時間的余裕が無いのもある。かといって自宅に帰れるのは、ほぼ深夜。
そう。俺は、あの日のことを謝れずにいる。
*
美月の唇に自分のそれを重ねた。吸い込まれるように、自然な流れに思えたが、それは俺の都合だったわけで。
男性慣れしていない美月にしてみれば、突然セクハラされたようなもの。
気付けば、美月は顔を真っ赤にして、パクパクしていた。そして、「寝ます!」と言い残し、寝室に篭ってしまった。
俺は仕事で呼び出されてしまい、そのまま外出することになって……、それからは全然話せていない。
話すのが怖い自分もいる。
多忙な仕事に逃げて、帰宅時間が遅くなっても受け入れてしまっている。美月にあの日のことを謝って、「嫌でした」とか言われたら……と思うと、怖気付いてしまうのだ。
だけどこのままではいけない。