一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約

★キス 晴正side


 美月が退院して一週間が過ぎた。
 あれから出張や裁判が重なり、事務所に泊まり込むことも多く、なかなかじっくりと話せていない。

 勿論、家でしっぽり飲む約束も果たせぬままだ。

 パラリーガルとして働く彼女は、実に事務的で、プライベートな話題に持ち込めない。俺にその時間的余裕が無いのもある。かといって自宅に帰れるのは、ほぼ深夜。

 そう。俺は、あの日のことを謝れずにいる。



 美月の唇に自分のそれを重ねた。吸い込まれるように、自然な流れに思えたが、それは俺の都合だったわけで。

 男性慣れしていない美月にしてみれば、突然セクハラされたようなもの。

 気付けば、美月は顔を真っ赤にして、パクパクしていた。そして、「寝ます!」と言い残し、寝室に篭ってしまった。

 俺は仕事で呼び出されてしまい、そのまま外出することになって……、それからは全然話せていない。

 話すのが怖い自分もいる。

 多忙な仕事に逃げて、帰宅時間が遅くなっても受け入れてしまっている。美月にあの日のことを謝って、「嫌でした」とか言われたら……と思うと、怖気付いてしまうのだ。

 だけどこのままではいけない。
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