legal office(法律事務所)に恋の罠
エレベーターを降りた奏と和奏は並んでエントランスに降り立った。

只でさえ目を引く美形な男女である。

キッチリとしたスーツに身を包む二人は、いずれもモデルのようにスタイルがいい。

和奏は、交渉事以外で眼鏡をかけていない。

和奏にとって眼鏡は戦闘服のようなもの。

「こちらで昼食をご準備させて頂いております。段差に気をつけて」

完璧に女性をリードする奏と堂々とリードされる和奏。

従業員もホテルの宿泊客も、映画のワンシーンのような二人に目を奪われていた。

「Oriental Beauty!」

外国人客も思わずスマホのカメラを構えていた。

「CEOの恋人かしら?」

「えっ?お客様でしょ?妹さんかも,,,」

休憩でレストランを訪れていたホテルスタッフの会話が聞こえる。

奥の個室に誘導されると、完全にプライベートな空間が確保される。

「お食事は、こちらにお任せでよろしいですか?」

「いえ、時間もありませんのでランチプレートとコーヒーでお願い致します」

和奏がビジネスバッグから書類を取り出そうとすると、テーブルを挟んだ向かい側の席から手を伸ばして奏が制した。

「内容は全て目を通し、頭に入っております。この時間は食事を楽しんで」

奏の言葉にため息をつくと、和奏は

「さすがCEOですね。ではお言葉に甘えて」

と、出そうとしていた書類をもとに戻し姿勢を正して椅子に座り直した。


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